□「私たちが防波堤に…」
感染が拡大する宮崎県の口蹄(こうてい)疫。政府は19日、発生地から半径10キロ圏内のすべての牛や豚にワクチンを接種し、殺処分することを決めた。畜産農家は「何も考えられない」と落胆する一方、「私たちが防波堤にならねば」と悲痛な叫びを上げる。最初に感染が確認されて20日で1カ月。「激甚災害」の様相を呈する現場で関係者は「もっと早く対策があれば」と唇をかんだ。
■漂う無力感
被害が発生した高鍋、新富両町に隣接する西都(さいと)市内で牛57頭を飼育している橋口敏暢さん(66)は「涙が出てくる。今は何も考えられない」と肩を落とした。市職員から、畜舎が対策実施の圏内に入るとの通告を受けたのは19日午後。「口蹄疫が沈静化しても新たに牛を育てる気になれない」と無力感に襲われている。
「日本の畜産を守るための防波堤になるしかないか」。被害が多発する川(かわ)南(みなみ)町で豚約7千頭を飼うJA尾鈴の遠藤威宣養豚部会長(56)は、こうつぶやいた。ただ1カ月間、消毒作業を毎日続けて被害を免れてきただけに、全頭処分を完全に納得しているわけではない。「10キロという範囲に根拠はあるのか。国はどこまでウイルスが来ているのかを確認してほしい」と声を荒らげた。
■「夢だったら」
「この1カ月は本当に長かった。生き地獄のようだった」。都農(つの)町で子牛など約80頭を飼育する河野辰徳さん(58)は、時折声を詰まらせながら振り返った。
消毒作業に追われる毎日。肉体的な負担以上に「もし家畜が感染したら」とおびえる精神的なストレスがきつかった。「これが夢だったら…」と思わずにはいられない。
全頭処分の決定に、「牛は家族の一員。覚悟はしていたが…」。近所では泣いている人もいたという。 感染拡大で、22万頭の子牛を生み出し、銅像まで建った伝説の種牛「安平(やすひら)」も殺処分の対象になった。
安平を約1年間飼育していた宮崎市佐土原町の畜産農家、永野正純さん(61)は「あんな牛に巡り合えたのは幸せだった」と声を詰まらせる。殺処分について「自分の子供と同じだから…。それ以上、言わなくても分かるでしょう」と言葉少なだった。
■ゴーストタウン
被害が出ている地域では、白い防護服姿の担当者が消毒する姿が見られ、災害派遣の自衛隊車両が行き交うなど「激甚災害」の様相を呈している。
川南町では幹線道路にも検問所が設けられ、通行する車は消毒液の散布を受けなければならない。「不要不急の外出は避けるように」との非常事態宣言が出ていることもあり、人影はまばら。ゴーストタウンのような静けさだ。
殺処分の担当者もやり切れない。作業を終えて川南町役場に戻った県職員は「きょうは300頭ぐらい処分した」と語った。職員によると、殺処分は牛や豚の首にロープをかけて押さえ込み、獣医が首筋に静脈注射を打つ。約800キロの牛も1分間もすれば倒れ込む。「いくら仕事でもつらい」とつぶやいた。
新富町の土屋良文町長は「国がもっと早く現場を見て行動してくれていたら」と話した。
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